すいな整体ノート

今から２０年前、私がこれからの仕事を探してあれこれ考えていた頃です。

人のお役に立てて、生涯現役で働くことを念頭に新聞、雑誌、テレビ、インターネットといろいろなメディアで探し、セミナーにも参加して自分にできること、やりたいことを探す毎日でした。

それは２年間続きました。

新しい仕事を始めるためにかかる費用や習得の時間を考えても、なかなかピッタリはまるものがなくて半ばあきらめかけていたとき、偶然に“整体”の仕事が頭に浮かんだのです。

それは考えた結果というより突然現れて、乾いた砂に水が浸み込むように自分の体に入り込んできたのです。それまで“整体”はまったく考えていなかった分野でしたから、まるで山の中を遭難していて「もうだめか・・・」と思い始めたときに目の前がぱっと開けたように新鮮な驚きがありました。

いったん入り込んだ“整体”という新しい仕事は、”鷲の爪”でがっちり掴まれたように四六時中私の脳から離れないで、自然と行動に駆り立てていったのです。

まず学校を探さなければなりません。

パンフレットを取り寄せ、あちこち見学に行き、体験をさせてもらいました。初めのうちはどこも新鮮で見学に行くたびに「ここに決めようかな」と思いながら帰ってきました。

見学に行った学校の中には入学勧誘にとても熱心で何度も電話をいただいた学校がありました。

でもなかなか決まりません。いつまでもぐずぐずして行動できない、自分の優柔不断を改めて感じてしまいました。

こうして整体学校を探すうちに「すいな（推拿）」という中国医学に基づいた手技法があることを知ったのです。

それが、やわらかいタッチで術者の親指が痛くならない、しかもお客さんの体に深く効く手法だったのです。


もともと中国医学には関心があったのですが「すいな（推拿）」は知りませんでした。
これは面白そうだといろいろ調べてみると「すいな（推拿）」は４千年も前に中国で発生した手技法で次第に医学として確立されていったということが分かりました。


私が整体の仕事で独立すると言ったら友人に“やめとけ”と言われました。

「今の仕事に不満があっても、みんなそうだし、いまさら新しいことをやるには齢をとりすぎている、そこそこやればいいじゃないか。時間と金の無駄さ。」と言われたのです。

彼らの言ったことは正論なのかもしれませんでした。でも、まさに彼らが言ったことこそ私が独立をしようと考えた理由だったのです。

金銭だけが目的ではなく、人生を悔いなく生きるためにやりたくもない仕事や煩わしい人間関係に惑わされることなく、人のお役に立つことを肌で感じ、生涯現役で働くことを目標としたのです。

それから２年後、会社勤めの傍ら仕事の関係で授業を休んでしまったり、モチベーションが上がらなかったりしましたが、苦労して独立にこぎつけたとき友人たちは「やるとは思っていたよ」とか「さすがだね」「これからが大変だ」と、ある意味で羨望の言葉を投げてきたのでした。

私はそのことについて素直に“ありがとう”と答えましたが、本当は「これからだ」と強く思ったのです。